ファントム / Phantom
黒褐色の地に黄褐色の柄が残るBEL系モルフ。2コピーのスーパーでは淡色や背中の帯が目立ち、単体と大きく印象が変わります。
このモルフについて
ファントムとは
ファントム(Phantom)は、褐色と暗色の柄を持つ1コピーの姿から、スーパー体や他のBEL系との組み合わせで大きく印象を変える、不完全顕性モルフです。BELはブルーアイリューシスティックの略ですが、BELコンプレックスに属する個体がすべて白くなるわけではありません。
同じファントムを2コピー持つスーパーファントム、モハベと組むパープルパッション、レッサーと組む白色系では、目指す完成形が違います。紫がかった淡色と柄を楽しむのか、白い体へ進めるのかを先に決めると、相手選びが具体的になります。
ミスティックと近い関係にあり、現在の商用検査ではMystic/Phantomとまとめた項目があります。流通名、血統の呼び方、検査結果はそれぞれ記録して扱います。
【C:作出者・検査提供者】
資料区分:A=査読研究、B=大学・獣医等の専門資料、C=作出者・繁殖者・検査機関の一次資料、D=二次資料。
特徴・見分け方

当店の販売掲載個体:ファントム アローヨ HRA(♂・CB)。各形質を含むコンボ例です。
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暗い部分と明るい柄の境目を見る
1コピーのファントムは、黒褐色の地に黄褐色の柄が残るため、スーパー体や白色系ほど一目で分かる変化ではありません。頭部、体側の明るい模様、腹側へ抜ける淡い部分を合わせて見ます。別の暗色系やモハベに似る個体もあるので、色の濃さだけで識別しません。
スーパーファントムでは模様が大きく変わり、淡い色や背中の帯が目立つ方向になります。ただし「スーパー=一様な純白」とは説明しません。正確な識別には親情報や検査結果を添えます。
販売個体42の写真について
当店の『ファントムアローヨHRA』雄・CBは、ファントムを含む多重コンボの実例です。提供写真では、暗い地色、黄褐色の輪状・伸びた模様、体側下部の明るい抜けを確認できます。これらをファントムだけの効果に分解することはできません。
この写真には「ファントム+アローヨ+HRAの複合例」と添え、単体の識別見本やスーパー体の写真には使いません。
【C:作出者の記録/当店販売記録・提供写真】
遺伝・アレル関係
1コピーと2コピーで表現が変わる
ファントムは不完全顕性として整理します。1コピーでも表現し、同じ形質を2コピー持つとスーパーファントムになります。古い繁殖資料にあるCo-Dominant/Co-domは、本図鑑ではそのまま共顕性とせず、表現の違いに沿って記載します。
BELの構成を分けて記録する
育種上、ファントムとモハベ、レッサーなどはBELコンプレックスの同じ座位のアレルとして扱われます。ファントム/モハベは、同じ座位に両者を1つずつ持つ構成です。スーパーファントムとは別で、親から子へ渡るのはこの座位ではどちらか片方です。
そのためファントム/モハベにレッサーを独立した3つ目のアレルとして足す計算はしません。
ミスティックとの関係
ProHerperはMystic/Phantomを合同の検査項目にしています。これは検査サービス上の扱いとして確認できますが、この一覧だけから全血統の原因変異が同一と査読論文で証明された、とまでは言えません。結果がどの変異を対象とし、両者を区別するのか、コピー数まで報告するのかは、検査機関の説明を確認します。
【C:繁殖・商用検査の情報】
作用・表現型への影響
見た目の作用と分子機構を区別する
ファントムは組み合わせによって、暗い柄を残す方向にも、色柄を薄くする方向にも使われます。白色系では別の形質の外見が隠れやすくなるため、見た目から追加形質の有無を決めず、個体ごとの記録に戻って確認します。
BEL研究から分かる範囲
Kumsiri・Kanchanaphum(2026)はBEL表現に関わる候補としてEDNRBを報告しています。ただし、これはファントムとミスティックの原因塩基配列を比較して同一性を確定した研究ではありません。著者は疑われる欠失の確認に配列解析やコピー数解析が必要としています。
したがって「ファントムの原因変異はEDNRBのこの位置である」「ミスティックとの同一性がこの論文で確定した」とは書きません。繁殖で確認した伝わり方、検査サービスの判定、細胞レベルの機構は、根拠の範囲を分けて説明します。
【A:BELの候補遺伝子研究/C:商用検査】
他遺伝子との相互作用・コンボ
パープルパッション:ファントム/モハベ
紫〜灰色がかった淡色と背中の帯を楽しむ代表的な構成です。Boa BasementはPhantom MojaveをPurple Passionとして紹介しています。愛称だけで判断せず、ファントムとモハベの組み合わせであることを確認します。
ミスティックポーションとの呼び分け
ミスティック/モハベはMystic Potionとして流通します。Northwest Reptilesは実際にMystic PotionやSuper Mysticを繁殖したことを記録しています。よく似た系統の名称でも、購入時の名前や親の情報を勝手に書き換えずに残します。
カルマ:ファントム/レッサー
白色系の目標です。Ralph Davis本人も2003年にこの組み合わせから白い個体が生まれたと記録しています。パープルパッションの紫がかった表現を強めたい場合とは、相手を選ぶ目的が変わります。
ファントム+アローヨ+HRA
販売個体42はこの複合例です。白色系ではなく、暗色と体側模様を残して観察できる題材になります。HRAは名称にHetが入る形質名であり、単純に「発現しない潜性の保因」と読み替えません。
【C:繁殖者の実例・自店販売記録】
繁殖での使い方

ファントムの観察・構成・親選びを整理した説明図です。
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目標1:パープルパッション
ファントムとモハベを親の双方に分けて用意し、同じ個体にそろえる計画です。比較しやすさを重視するなら、他の形質が少ないファントムとモハベから選びます。淡色の広がり、背中の帯、成長後の色が好みに近い親や同系統の完成個体を確認します。
販売個体42のファントムアローヨHRA雄を使う場合は、モハベ雌が候補です。ただしアローヨやHRAを含む子も検討対象になるので、すべてを基本のパープルパッションとして扱わず、構成を個体ごとに確認します。
目標2:スーパーファントム
ファントムを両親から受け継ぐことが必要です。ファントム同士、または構成が確認されたスーパーファントムとファントムを組む方向が考えられます。写真の似方だけでスーパーを親に選ばず、由来と遺伝構成を確認します。
目標3:白色系のカルマ
ファントムとレッサーを親に分けて用意します。白い完成形では他の形質の識別が難しくなりやすいため、必要以上に形質数を増やさず、親番号と子の記録をそろえます。白い子が生まれたことだけで追加形質まで確定しません。
繁殖は成熟、摂餌、体調を満たしてから検討し、当店のCB雄も将来の親候補として状態を確かめます。
【C:確認済みの組み合わせを基にした繁殖設計】
健康・繁殖上の注意
ファントム固有の健康情報は限定的
今回確認した公開資料では、ファントム単独やスーパーファントムに固有の疾患の発生頻度を示す十分な研究を確認できませんでした。このため「遺伝性の問題がない」「スーパー体なら必ず健康」とは保証しません。
BELコンプレックス内でも構成は異なります。別のBEL系で報告される問題をファントム全体に広げず、購入する個体の眼・顎・体形、摂餌と成長の記録を確認します。販売個体42のような複合例は、ファントム以外の構成も含めて評価します。
【C:BELの構成別の説明。ファントム固有の疾患頻度を示す資料ではありません】
歴史・由来
繁殖記録から見たファントムの成立
Ralph Davisは、アフリカ由来の雌をGoblin雄と交配した初期の経緯を本人のページに記録しています。2003年にはファントムとレッサーの交配から白い個体を得て、2005年にはスーパーファントムを得たとしています。
このため「2005年に突然初めて発見された」と一行にまとめると、初期繁殖、白色系コンボ、スーパー体確認という別々の出来事が混ざります。2005年は作出者のページでスーパー確認に結び付く重要な年です。
ミスティックの名前も残す
ミスティックは別名で流通してきた歴史があり、Northwest Reptilesの旧来の解説もファントムとの近さを論じています。現在の合同検査項目と合わせても、個体の流通名や親の系統記録を消す必要はありません。
今後、対象変異や比較した系統が明記された一次資料が公開された場合は、その範囲を示して追記できます。
【C:作出者本人の記録・繁殖者解説・検査提供者】
不完全顕性(不完全優性)Incomplete Dominant
1 コピーでも見た目に出て、2 コピー揃うと「スーパー体」と呼ばれる別の見た目になります。業界で長く「共優性(Co-Dom)」と呼ばれてきた型です。
参考資料
- CPhantom: The MatrixRalph Davis ・ 2001
- CBel ball python complexProHerper
- CGenetic tests for reptilesProHerper
- CBall Python Morph: MysticTom / Northwest Reptiles ・ 2021(最終更新)
- CPhantomBoa Basement
- ADetermination of the candidate gene responsible for BEL (Blue Eye Leucistic) expression in the ball python (Python regius)R. Kumsiri; P. Kanchanaphum ・ 2026
- CファントムアローヨHRA(販売個体42)AniLover / アニラバ
