アニラバANIMAL LOVERS / FUKUOKA
ヒョウモントカゲモドキ

タンジェリン / Tangerine

オレンジ色の濃さと広がりを選別交配で高めた色彩形質。黄橙色から深い赤橙色まで幅があり、斑点を残す個体も柄の少ない個体もいます。

遺伝形式
多因子タップで解説
Super / Homo
なし
別名/旧称
Tangerine・タンジェリン
最終確認日
2026-10-08

このモルフについて

タンジェリンとは

タンジェリン(Tangerine)は、オレンジ色の体色を選別交配によって高めてきた、ヒョウモントカゲモドキの代表的な色彩形質です。

黄色にオレンジ色が重なる個体から、頭部や胴体に濃い赤橙色が広がる個体まで、色の濃さと入り方には幅があります。斑点を残した個体も、柄を減らした個体もいます。

繁殖上はポリジェニック/Line-bredの選別形質として扱われ、タンジェリンという名前だけで、次世代の色や濃さが一律に決まるわけではありません。

また、Tangerine Tornado、Electric、Hot Geckoなど、繁殖者ごとに選別されてきたラインがあります。タンジェリンは広い色彩カテゴリーで、その中のライン名には血統の由来も含まれます。

タンジェリンの選別と世代ごとの表現差
複数のタンジェリンラインを扱った繁殖記録

資料区分:A=査読研究など、B=研究機関・専門団体など、C=作出者・繁殖者の一次記録、D=第三者による整理・解説。

特徴・見分け方

オレンジ色の濃さと広がり

タンジェリンを見るときは、オレンジ色が濃いかどうかに加え、どこまで広がっているかを確認します。

・頭部から胴体までの色のつながり
・背中と体側の色の濃さ
・黄色、オレンジ色、赤橙色の配分
・斑点やバンド、ストライプとのコントラスト
・尾のオレンジ色が広がる範囲

The Urban ReptileのTangerine Tornadoでは、頭部と胴体に強い赤みを持つ個体を選んでプロジェクトを進めたことが説明されています。同じタンジェリンでも、明るいオレンジ色を重視するのか、深い赤橙色を重視するのかで、見どころが変わります。

【C:作出元の選別記録】

Tangerine Tornadoで選別された色の特徴

ハイポ・キャロットテールとの見分け方

タンジェリンは体のオレンジ色を表す名称です。黒い斑点が少ない表現はハイポ、胴体に黒い斑点がない表現はスーパーハイポとして、色とは別に確認します。頭部にも斑点がない場合には、バルディという表記が加わります。

キャロットテールは、尾の付け根から広がるオレンジ色の表現です。胴体のオレンジ色が強いことと、尾のオレンジ色が広いことは、それぞれ見る必要があります。

Jonathan Ho氏の繁殖記録でも、体色、斑点の数、柄の形、尾のオレンジ色の範囲にさまざまな組み合わせが見られています。

体色と尾の色を選別した繁殖者の記録
ハイポ系の名称とタンジェリンの整理

成長記録と血統を合わせて見る

色や柄は成長によって変化します。幼体の鮮やかさだけで選ばず、成体になった親や兄弟の写真も見られると、目指す表現を考えやすくなります。

特定のラインを探す場合は、写真の色だけで判断せず、作出者、親のライン、他ラインとの交配履歴を確認します。強いオレンジ色を持つことだけでは、Tangerine TornadoやElectricといった由来までは確定できません。

【C:成長・繁殖記録/D:名称の整理】

成長後の表現を待って選別する繁殖者の記録

遺伝・アレル関係

選別交配で高める色彩形質

タンジェリンは、繁殖上ポリジェニック/選別形質として扱われています。オレンジ色の強い個体を残し、次の世代でも色の濃さや広がりを比較しながら、目指す表現へ近づけていきます。

これは、タンジェリンに関わる遺伝子の数や、それぞれの働きが分子レベルですべて解明されているという意味ではありません。本項で確認した資料では、タンジェリン全体を一つの原因遺伝子や特定の変異で説明する結果は確認できていません。

コピー数・het・Superの扱い

タンジェリンの色を「1コピー」「2コピー」で区分したり、色の薄い個体を「hetタンジェリン」と判定したりすることはできません。タンジェリン同士の交配にも、濃いオレンジ色が何%出るという共通の固定比率はありません。

「Super Hypo Tangerine」のSuperはスーパーハイポの表現に使われる語で、タンジェリンを2コピー持つスーパー体という意味ではありません。

例えば「タンジェリンhetトレンパー」という個体では、タンジェリンは色の選別形質、hetトレンパーは潜性のトレンパーアルビノに関する保因情報です。記録では色彩のラインと、発現・保因が確認された別形質を分けて残します。

【C:繁殖者による選別の記録/D:遺伝形式の実務上の整理】

タンジェリンの表現を固定確率で計算できない理由
体色の選別と潜性形質を分けた親個体・繁殖記録

作用・表現型への影響

オレンジ色と黒い模様

タンジェリンで選別されている主な特徴は、オレンジ色の濃さと広がりです。黒い模様を残したまま色を濃くする方向も、ハイポを組み合わせて柄の少ないオレンジ色の体を目指す方向もあります。

アルビノを組み合わせると、黒〜褐色のメラニンの表現が弱まり、黄色やオレンジ色を主体とする見た目になります。実際にThe Urban Reptileでは、ベルアルビノとスーパーハイポの組み合わせに、自社のタンジェリンラインを導入して体色を高める取り組みを紹介しています。

Bell Sunglowへのタンジェリン導入

色素の仕組みと分かっていない部分

爬虫類の体色には、黒〜褐色に関わるメラニンだけでなく、黄色〜橙色などに関わる色素や、光を反射する構造も関わります。メラニンの表現が弱まっても、黄色やオレンジ色が残ることがあります。

ただし、この一般的な色素の仕組みから、タンジェリンでどの色素がどれだけ増えたのか、どの遺伝子が作用しているのかを決めることはできません。各ラインの赤みや濃さについても、写真だけで細胞や色素の違いまで説明するのは控えます。

【B:色素細胞の基礎的な説明/C:繁殖で観察された表現】

爬虫類の色素とアルビノの皮膚を扱った研究報告

他遺伝子との相互作用・コンボ

スーパーハイポタンジェリン・キャロットテール

スーパーハイポ + タンジェリン + キャロットテール

胴体の黒い斑点を減らし、体と尾のオレンジ色を楽しむ組み合わせです。SHTCTと略され、頭部にも斑点がなければBaldyを加えたSHTCTBという表記が使われます。

体色の濃さ、尾のオレンジ色の範囲、頭部の柄はそれぞれに幅があります。長い略称が付いていても、全身が同じ濃さのオレンジ色になるとは限りません。

選別形質とSunglow系の名称の整理

Sunglow(サングロー)

アルビノ + スーパーハイポ系の柄の減少 + タンジェリンの選別

オレンジ色と、柄の少ないアルビノの表現を合わせる方向です。

The Urban Reptileが紹介するオリジナルのSunglowは、トレンパーアルビノ、スーパーハイポ、キャロットテール、自社のタンジェリンラインを組み合わせたものです。同社は2004年に公開したと説明しています。

一方、Bell Sunglowのようにベルアルビノを使う名称もあります。Sunglowという言葉だけでアルビノ系統を省略せず、どの系統を使っているかまで確認します。

Sunglowの構成と公開年についての作出元の説明
Bell Sunglowの構成

Firewater(ファイアウォーター)

Hot Geckoラインのタンジェリン + レインウォーターアルビノ

Dan・Roxanne Lubinsky両氏が、自分たちのタンジェリンラインをレインウォーターアルビノへ導入して選別したプロジェクトです。

本人たちは、成体でオレンジ色が主体になる個体から、オレンジ色と青みのあるラベンダー色が見られる個体まで紹介しています。Firewaterという名前にはこの作出背景があるため、オレンジ色のレインウォーターすべてを、見た目だけでFirewaterと判断することはできません。

【C:作出者の一次記録/D:略称・名称の整理】

Firewaterの作出者コメント

1

繁殖での使い方

繁殖での使い方の図

体色・尾の色・柄を分けて目標を決め、複数世代で成体の表現を比較する選別プロジェクト。各カードは独立した目標で、交配1回の結果を保証する図ではありません。

詳しく見る

どんなオレンジ色を残したいか決める

タンジェリンの繁殖では、まず目標となる成体の姿を決めます。

・頭部から体側まで濃いオレンジ色を広げたい
・明るい色より、深い赤橙色を残したい
・柄を減らして、体色をすっきり見せたい
・黒い柄とオレンジ色のコントラストを強めたい
・体色に加え、尾のオレンジ色も広げたい

親は、名前や幼体時の写真だけでなく、成体の表現、兄弟、過去の子の仕上がりまで見て選びます。両親に狙う特徴があっても、子には幅が出るため、成長後の比較と次世代に残す個体の選別を続ける計画が必要です。

The Urban Reptileも、タンジェリンは複数の繁殖シーズンを通じて表現を高められる形質として紹介しています。

明確な目標と記録を勧める作出元の繁殖解説

体色とキャロットテールを両立させる

濃い胴体と広いキャロットテールを目指すなら、体色と尾を別々に評価して親を選びます。体色の優れた親に、尾の色の範囲が優れた相手を選ぶ、といった組み方が考えられます。

Jonathan Ho氏は、体色を高める選別と、尾のオレンジ色を広げる選別を進め、両方の特徴を持つ子を次へ残しています。狙った組み合わせが一度で揃うとは限らず、柄や色の違いを見ながら世代を重ねた実例です。

この方向では、体色の濃さだけでなく、尾の色の広がりと成長後の残り方も同じ条件で撮影しておくと、次の親選びに役立ちます。

体色と尾を並行して選別した具体例

黒い柄を生かすタンジェリン

オレンジ色に太い柄を合わせたい場合は、ボールドストライプなど、目標に近い柄を持つ相手を選ぶ方向があります。

Shannon Hiatt氏は、Blood系統に強い模様を加えることを目的に、Bloodの雄とボールドストライプの雌を交配した経験を紹介しています。色を濃くすることと柄を減らすことが、いつも同じ繁殖目標になるわけではありません。

この方向では、子のオレンジ色に加え、柄の太さ、背中でのつながり、頭部から尾までのまとまりを比較します。ラインを交差させた場合は、その組み合わせも残します。

Bloodとボールドストライプを組み合わせた繁殖者の記録

アルビノ系プロジェクトへ色を加える

SunglowやFirewaterのような表現を目指す場合は、使用するアルビノ系統と、持ち込みたい色彩ラインを先に決めます。すでに目標に近い色を持つアルビノ個体を使うと、色や柄を比較しながら進めやすくなります。

タンジェリン側がそのアルビノを保因しているかどうかで、次世代にアルビノが現れる条件は変わります。一方、アルビノが現れることだけでは、オレンジ色の濃さやSunglowらしい柄の少なさまで揃いません。

Kelli Hammack氏は、自分のSHTCTラインをベルアルビノへ交配し、その後も選別を続けた経験を語っています。別形質を導入した後も、目的の色と柄を選び続ける例です。

親の組み合わせ、導入したライン、確認できた保因情報を残し、異なる血統を使った子は交配の履歴が分かる形で管理します。

【C:繁殖者の実例をもとにした利用例】
【親選び・比較方法の一部は、実例から考えた計画上の提案です】

ベルアルビノへSHTCTを導入した本人のインタビュー
親ごとの色彩・アルビノ保因情報を残す繁殖記録

健康・繁殖上の注意

タンジェリン固有の健康問題について

今回確認した資料の範囲では、タンジェリンのオレンジ色そのものに結びつく、固有の疾患を示す根拠は確認できていません。健康上の問題が起こらないことまで検証された、という意味ではありません。

繁殖に使う個体は、色の濃さだけで決めず、成長や繁殖成績、親族で繰り返し見られる問題も確認します。特定のライン名や鮮やかな体色だけで、健康や繁殖適性を保証することはできません。

アルビノなどを組み合わせた個体では、併せ持つ形質の注意点も個別に確認してください。

【タンジェリン固有の疾患との関連は未確認】

歴史・由来

複数の繁殖者が進めてきた色の選別

タンジェリンは、オレンジ色の強い個体を選び、世代を重ねて発展してきた色彩カテゴリーです。現在のさまざまなタンジェリンを、ひとつの作出年とひとりの作出者だけで説明することはできません。

代表的な系統として、The Urban GeckoのTangerine Tornado、Dan Lubinsky氏のHot Gecko、Kelli Hammack氏のElectricなどがあります。

ACReptilesはこれらのラインを用いた繁殖を記録し、2008年にはTangerine Tornado × Hot Gecko、Tangerine Tornado × Electricの子を紹介しています。同じタンジェリンというカテゴリーの中で、ラインを維持する選別と、異なるラインを組み合わせる取り組みが進められてきました。

2008年の子まで掲載されたタンジェリンの繁殖記録

アルビノとの組み合わせへ

タンジェリンの選別は、アルビノを使うプロジェクトにも広がりました。

・2004年:The Urban Reptileが、自社タンジェリンを用いたSunglowを公開したと説明
・2004年:Kelli Hammack氏が、自分のSHTCTラインを用いてBell Hybinoを作出したと回想
・2006年:Dan・Roxanne Lubinsky両氏が、Hot Geckoラインとレインウォーターを組み合わせた繁殖から、後のFirewaterとして紹介する特徴的な個体を作出

これらは、それぞれの作出者が残した記録です。現在流通する個体の由来を確認するときも、色の印象に加えて、どのプロジェクトからどのように引き継がれた個体かを見る手掛かりになります。

【C:作出者・繁殖者の一次記録】

Sunglowの作出元による記録
Bell Hybinoの作出についての本人の回想
Firewaterの2006年の作出を説明した本人のコメント

多因子Polygenic
ひとつの遺伝子では決まらず、複数の遺伝的要因で色や模様の出方が決まります。メンデル遺伝の比率だけでは結果を予測できません。

参考資料

お店にいるタンジェリン