レインウォーターアルビノ / Rainwater Albino
黒〜褐色の発色が弱まり、黄色やオレンジ色を残して模様が淡くなる潜性系統。ラスベガスアルビノとも呼ばれます。
- 遺伝形式
- 潜性(劣性)タップで解説
- Super / Homo
- あり レインウォーターアルビノ(ホモ接合体/2コピー)
- 遺伝子座/原因遺伝子
- SLC24A5(候補遺伝子。因果関係は機能解析待ち)
- 別名/旧称
- Rainwater・レインウォーター
- 最終確認日
- 2026-10-08
このモルフについて
レインウォーターアルビノとは
レインウォーターアルビノ(Rainwater Albino)は、ヒョウモントカゲモドキの主要なアルビノ3系統のひとつです。Las Vegas Albino(ラスベガスアルビノ)という別名でも知られています。
黒〜褐色の発色が弱まり、通常なら暗く見える模様が淡い色になります。一方で黄色やオレンジ色は残るため、淡い体色を楽しむ個体だけでなく、色やストライプを選別した鮮やかな系統にも使われています。
遺伝形式は常染色体潜性です。レインウォーターに関わる変異型アレルを両親から1コピーずつ受け継いだ個体が発現します。トレンパーやベルとは区別して管理するアルビノ系統です。
色・柄・眼へ広がるプロジェクト
レインウォーターでは、Raining Red Stripeのように色と柄を磨く方向と、エクリプスを加えたTyphoon、さらにマーフィーパターンレスを加えたCycloneのように複数の形質を重ねる方向があります。
「レインウォーターであること」は共通していても、目標となる仕上がりはプロジェクトによって異なります。
【B:アルビノ3系統の色素研究/C:繁殖者の記録】
資料区分:A=査読研究など、B=研究機関・専門団体など、C=作出者・繁殖者の一次記録、D=第三者による整理・解説。
特徴・見分け方
黒い部分の変化を見る
レインウォーターでは、通常黒〜褐色になる部分が白っぽい色や淡いラベンダー色、薄茶色として見えることがあります。アルビノでも柄そのものが必ずなくなるわけではなく、地色と模様の色の違いが残ります。
見るときは、全体の明るさだけでなく、次の部分を比べると個体ごとの特徴が分かりやすくなります。
・頭部、胴体、尾で、暗い色がどの程度残っているか
・黄色〜オレンジ色がどこまで広がっているか
・地色と模様の境目がどの程度はっきりしているか
・ストライプなどの柄がどのようにつながっているか
【B:色素研究/観察項目は表現を比較するための整理】
淡さだけでは系統を確定できません
レインウォーターは淡いアルビノとして紹介されることがありますが、3系統の中で必ず最も淡くなる、一定の眼色だけで判別できる、という特徴ではありません。
実際にレインウォーターでも、Raining Red Stripeなどでは色や柄の選別が続けられています。選別系統やコンボが加わると外見の幅はさらに広がります。
系統確認では、写真の色だけで判断せず、親個体のモルフ、繁殖者が管理している系統、他のアルビノを導入した履歴を確認します。成長前後や親・きょうだいの写真は、系統の証明とは別に、将来の色や柄を考える参考になります。
【C:選別記録/外見と系統情報を合わせて判断】
遺伝・アレル関係
潜性として扱うアルビノ系統
レインウォーターアルビノは、単一遺伝子座の常染色体潜性形質として扱われます。
・1コピー:通常はレインウォーターアルビノを表現しないhet(ヘテロ接合体)
・2コピー:レインウォーターアルビノを表現するホモ接合体
ここで数えるのは変異型アレルのコピー数です。発現しているレインウォーター自体が2コピーの状態であり、その上に別の「スーパーレインウォーター」があるわけではありません。
SLC24A5は有力な候補遺伝子
研究ではSLC24A5の第6エクソンに、タンパク質の合成を途中で終わらせる変異が見つかりました。変異を持つタンパク質では、膜を貫く領域が4つ失われると予測されています。
ただし、関連する変異を見つけた段階と、その変異だけで表現型が起こることを機能実験で確かめた段階は異なります。研究者は、原因変異と確定するには追加の機能解析が必要としています。
【A:各系統の候補遺伝子とSLC24A5の候補変異/B:潜性遺伝の報告】
作用・表現型への影響
メラニンを蓄える構造への影響
メラニンは、黒色素胞の中にあるメラノソームという小さな構造で作られ、蓄えられます。レインウォーターの候補遺伝子SLC24A5は、イオン交換体NCKX5をコードし、メラノソームの形成に関わります。
2026年の研究で重要なのは、レインウォーターのメラノソームでは形や大きさが変化している一方、十分にメラニン化した構造が観察された点です。
この観察は、レインウォーターを「メラニンが完全に存在しない」「すべてのメラノソームが未成熟のまま止まる」と説明することが適切でないと示しています。研究者は、ヒョウモントカゲモドキのNCKX5には、メラノソームを正常な形に作る働きが特に重要ではないかと考えています。
【A:電子顕微鏡による観察/中程度:NCKX5の具体的な働きの解釈】
色が薄くなることと、無地になること
レインウォーターで中心となるのは、黒〜褐色を作るメラニンの表現の変化です。黄色やオレンジ色、体の柄まで一律に消える形質ではありません。
そのため、レインウォーターを入れて暗い部分の見え方を変えること、色やストライプを選別すること、マーフィーパターンレスを加えて柄を変えることは、それぞれ異なる働きを利用しています。
他遺伝子との相互作用・コンボ
Typhoon(タイフーン)
レインウォーターアルビノ + エクリプス
レインウォーターの体色に、エクリプスの眼の表現を組み合わせたコンボです。トレンパー系統のRAPTOR、ベル系統のRADARに対して、レインウォーターを使用する組み合わせに当たります。
Typhoonという名称だけでは、体色やストライプの仕上がりまで決まりません。眼の表現と体の色・柄を、別々の選別項目として見ることができます。
Cyclone(サイクロン)
レインウォーターアルビノ + エクリプス + マーフィーパターンレス
Typhoonの構成にマーフィーパターンレスを加えた3形質のコンボです。レインウォーターによる色素の変化、エクリプスの眼の表現、マーフィーパターンレスによる柄の変化が重なります。
「柄が少ないレインウォーター」であればCycloneになるわけではありません。3形質の構成が確認されていることが名称の前提です。
【C:繁殖者の記録。構成と各個体の仕上がりは分けて評価】
Raining Red Stripeと色彩系の選別
Raining Red Stripeは、レインウォーターの発現に色やストライプの選別を重ねる方向です。Nico Pietrzyk氏は、Hotgeckos系の個体を使った選別と、Electric Tangerineを導入する試みを紹介しています。
この場合、アルビノの潜性遺伝と、色・柄の選別は分けて考えます。レインウォーターが発現していても、親と同じ色の強さやストライプがそのまま再現されるとは限りません。
【C:繁殖者本人の選別記録】
繁殖での使い方

Typhoon・Cyclone、Raining Red Stripeなどの目標図。構成と親選びを考えるための図で、交配1回の結果を保証しません。
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Raining Red Stripeで色とストライプを磨く
オレンジ色の強さと縦にまとまった柄を目標にするなら、Raining Red Stripeなど、色と柄の方向が分かる個体を起点に考えます。
親選びでは、単に「色が濃い」だけでなく、次の世代で残したい部分を具体的に決めます。
・成体になっても残る体色
・ストライプのつながり方や途切れ方
・頭部、胴体、尾での色の広がり
・親やきょうだいにも見られる表現
Nico Pietrzyk氏は、Hotgeckos系Raining Red Stripeを選別し、Electric Tangerineとの交配で次世代の色を高める計画を紹介しています。色彩系統の導入は、こうした目標を持つと使い方が明確になります。
例えば、レインウォーターを保因しない色彩系統を導入する場合、最初の世代はレインウォーターを発現しないhetになります。その子をレインウォーターへつなぎ、発現を回復させながら色と柄を選ぶ、という複数世代の計画になります。導入元の系統名と交配履歴も残します。
体色に眼の表現を加えるTyphoon
色や柄に加えてエクリプスの眼の表現も狙いたい場合は、Typhoonを目標にできます。
すでに好みの体色を持つレインウォーター系統があるなら、Typhoonや、エクリプスの保因が確認されたレインウォーターを組み込む方法があります。両親がエクリプスを子へ伝えられる構成かを確認し、そのうえで体色・柄・眼の表現を比較して親を選びます。
Typhoonを作ることと、その中から好みの色や柄の個体を残すことを分けると、プロジェクトの目標が整理できます。
柄を抑えた仕上がりへ広げるCyclone
眼の表現に加えて、マーフィーパターンレスによる無地の方向を狙うならCycloneが候補です。
具体的な組み合わせとして、Cycloneと、マーフィーパターンレスを保因するTyphoonを交配する方法が繁殖者から紹介されています。レインウォーターとエクリプスを両親で揃えたうえで、マーフィーパターンレスの発現を狙える組み合わせです。
このプロジェクトでは、ストライプの美しさよりも、成長後の地色や残る色のまとまりを親選びの中心にできます。幼体と成体の写真を比べ、求める完成形に近い親を探します。
残す表現と、残す情報
選別では色・柄・眼のどこを優先するかを決め、遺伝情報ではレインウォーター、エクリプス、マーフィーパターンレスそれぞれの発現・確定het・poss hetを記録します。外見の選別と遺伝子型の管理を両方続けることが、次の交配や譲渡時の説明につながります。
【C:繁殖者の実例/親選びと世代計画は、その構成に基づく活用例】
健康・繁殖上の注意
健康情報の確認範囲
レインウォーターの候補遺伝子や皮膚の色素を調べた研究は、視力・寿命・繁殖能力を系統的に比較したものではありません。この研究から、固有の病気や健康上の優劣を結論づけることはできません。
繁殖親を選ぶ際は、モルフ名だけでなく、個体の摂餌・成長・過去の繁殖成績を確認します。近縁の個体を使って色や柄を選別する場合も、系譜と繁殖成績を合わせて残します。
歴史・由来
Tim Rainwaterと1998年の記録
レインウォーターアルビノは、一般的なモルフ資料ではTim Rainwater氏が1998年に紹介した系統として整理され、Las Vegas Albinoの別名でも知られています。
California Academy of Sciencesの書誌にも、T. Rainwaterによる1998年の「Albino leopard geckos」(Vivarium 9:6–8)が収録されています。
この書誌で確認できるのは記事の存在と刊行年です。原記事本文までは確認できていないため、最初の個体の発見経緯や、発見・繁殖・紹介それぞれの時点を同じものとして断定していません。
【D:系統の紹介年/B:1998年記事の書誌】
Typhoonと選別系統への展開
Matt Baronak氏の2010年の記事にある著者紹介では、2009年にTyphoon(Rainwater Eclipse)とそのコンボを紹介したと記されています。
2013年のNico Pietrzyk氏のインタビューでは、Hotgeckos系Raining Red Stripeの選別が紹介されています。レインウォーターは単体のアルビノ系統としてだけでなく、眼の形質を重ねる方向と、色・柄を選別する方向へ広がってきました。
【C:繁殖者の記事・インタビュー】
Raining Red Stripeの選別記録(2013年)
色素研究から分子遺伝学へ
2006年にはアルビノ3系統の皮膚を調べる研究が発表され、レインウォーターでもチロシナーゼ活性が確認されました。
その後、2025年11月に先行公開され、2026年のGENETICSに掲載された研究で、SLC24A5の候補変異が報告されました。長年の繁殖で区別されてきた系統に対して、細胞と遺伝子の両面から説明する研究が進んでいます。
【B:2006年の色素研究/A:2026年の分子遺伝学研究】
潜性(劣性)Recessive
両親から 1 コピーずつ受け継いだときだけ見た目に出ます。1 コピーだけ持つ子は「het レインウォーターアルビノ」と表記され、見た目は通常と変わりません。
参考資料
- ACandidate genes underlying hypomelanistic morphs in squamate reptilesPierre Beaudier, Asier Ullate-Agote, Athanasia C. Tzika ・ 2026
- BTyrosinase Activity in the Skin of Three Strains of Albino Gecko (Eublepharis macularius)Tony Gamble, Jodi L. Aherns, Virginia Card ・ 2006
- CGecko Breeder Interview: Nico PietrzykNico Pietrzyk / Gecko Time ・ 2013
- CLeopard Gecko Breeding Season 2018:Typhoon/Cycloneの構成と計画OnlineGeckos ・ 2018
- CNew Leopard Gecko Mutation: The Marble Eye(著者紹介のTyphoon記録)Matt Baronak / Gecko Time ・ 2010
- DRainwater Albino:由来・別名の整理Leopard Gecko Wiki
- B文献目録:Rainwater 1998, Albino leopard geckosの書誌(317ページ)California Academy of Sciences ・ 2010
