スパイダー / Spider
明るい地色に細い網目状の暗色線が残り、体側下部に白が入るモルフ。ウォブルとの関連に注意が必要です。
このモルフについて
スパイダーとは
スパイダー(Spider)は、通常のボールパイソンの大きな体側模様が減り、細い暗色の線が網目のように残るモルフです。明るい地色と細い線の対比、腹側から体側へ上がる白い部分が、代表的な見どころになります。【D:外見の整理】World of Ball Pythons
1コピーで表現が現れる顕性形質です。一方、スパイダーには、頭の揺れや姿勢・運動の異常を含む「ウォブル」との関連があります。模様の美しさだけでなく、個体の生活のしやすさを合わせて理解する必要があります。【A:専門家調査】Rose・Williams、2014
既に飼育されている個体へのケアと、新しくスパイダーを作出する繁殖判断は分けて考えます。このページのコンボ紹介は、名称と構成を理解するためのもので、繁殖を勧めるものではありません。
資料区分
【A】査読論文、【B】大学・獣医・専門機関、【C】作出者・繁殖者・検査提供者の一次情報、【D】図鑑等の二次資料を示します。資料の種類と、各主張をどこまで確かめられるかは別に評価しています。
特徴・見分け方

当店の販売掲載個体:スパイダー hetクラウン(♂・国内CB)。クラウンは保因表記です。写真だけで運動状態や健康は判定できません。
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細い線と白い体側
スパイダーでは、通常の丸い体側模様を一つずつ数えるより、暗い線の太さ・分岐・つながり方に注目すると特徴を捉えやすくなります。腹側に近い白い部分と、上側の色柄の境界も確認します。【D:代表表現】World of Ball Pythons
個体を比べるときは、背面、左右の側面、頭部を同じ照明で撮影した写真を使います。線が少ない一部分だけを切り取ると、体全体の表現を見誤りやすくなります。幼体の写真と成体の写真も分けて扱います。
コンボを単体と混同しない
パステルなどが加わると色調や模様の見え方が変わります。明るいスパイダーを写真だけでBumblebeeと決めたり、模様が弱いことを根拠にSpiderを含まないと断定したりせず、親情報と販売名を照合します。
写真は外見比較の資料です。ウォブルの有無や程度は静止画だけでは判定できず、遺伝名が正しいことと健康状態が良いことも同じではありません。
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「スパイダー het クラウン」(雄・国内CB)の掲載写真では、黄褐色の地に枝分かれした細い黒褐色の線が入り、体側下部に白い部分が見られます。Spiderの表現を確認する掲載例であり、Clownを発現した写真ではありません。「het Clown」は販売ページの保有情報です。【C:販売者による実個体掲載】AniLover掲載個体
この静止画からウォブルの有無や程度は判断できません。
遺伝・アレル関係
1コピーで発現する顕性形質
2014年の専門家調査論文ではSpiderはdominantとして説明されています。1コピーでも表現するため、Clownなどの潜性モルフに使う「見た目には現れないhet」とは区別します。【A】Rose・Williams、2014
販売名の「Spider het Clown」は、Spiderの表現を持ち、Clownのアレルを1コピー保有するという意味です。Spider自体が見えない保因形質という意味ではありません。
ホモ接合体の扱い
Spiderを2コピー持つホモ接合体の表現と生存性については、ここでは確定事項として説明しません。2014年論文のホモ接合致死に関する記述は、繁殖者1名から得た卵の失敗の報告に基づく示唆であり、死亡胚の遺伝子型を確認した実証とは区別が必要です。【A:調査内の報告】同論文
現行のWorld of Ball Pythonsは「Incomplete dominant」と表示しています。ただし、その分類欄だけを根拠に、確認済みのスーパー体があると説明を変更することはしません。【D:現在の分類表示】World of Ball Pythons
検査情報
CltchのRGI検査案内にはSpiderが掲載されています。検査を使う場合も、対象変異と判定の範囲を提供者に確認します。モルフの判定と、将来のウォブルの程度を予測する検査は同じものではありません。【C】Cltch/RGI
作用・表現型への影響
模様の変化と、体への影響
外見では、暗い模様が細い線として残ることが大きな特徴です。ただし、柄の減少をそのまま「色素細胞の数が減った」「特定の色素合成が止まった」と読み替えることはできません。皮膚の表現と、その発生過程を説明する分子機構は分けて扱います。
内耳の研究が示したこと
2022年の生体CT・MRI研究は、Spider 5個体と野生型3個体を比較し、Spiderの内耳構造に違いを認めました。【A】Schrenkほか、2022
別の2022年論文では、Spider 4個体と野生型5個体の頭部をμCTで調べ、半規管や球形嚢などの形態の違いを記述しています。これは平衡感覚の異常との関連を支持する解剖学的知見です。【A】Starckほか、2022
後者は前者の臨床記録を参照しており、2本を独立した集団の研究として単純合算しません。少数の選ばれた個体の比較なので、Spider全体の発症率を求める資料でもありません。
色柄と内耳の変化がどの発生経路を介して結び付くかは、これらの画像研究だけで確定しません。「模様を作る遺伝子が脳を壊す」といった単純な説明は避けます。
他遺伝子との相互作用・コンボ
Bumblebeeを構成で理解する
Bumblebee(バンブルビー)はPastelとSpiderを組み合わせた名称です。パステルによる色調の変化と、スパイダーの細い線状の模様を重ねた表現として知られます。繁殖者の解説にもPastel+Spiderとして掲載されています。【C:構成の記録】Warwick Von Hagen、Justin Kobylka編集、2016
名前からSpiderの文字が消えていても、Spiderを含むことは変わりません。健康上の説明はコンボ名だけで省略せず、構成するモルフ名を併記するのが適切です。
Clownとの区別
Spider Clownは、Spiderに加えて潜性のClownを発現した個体を指します。Spider het ClownはClownの保有個体であり、Clownを発現しているという意味ではありません。Pastel Spider het Clownも同様で、Pastel+Spiderの表現とClownの保有情報を分けて読みます。
Clownを加えたことがウォブルを解消する根拠にはなりません。特定の写真で魅力的に見えることと、その組み合わせを新たに作出する判断は別です。
追加モルフを対策として扱わない
Blackheadとの組み合わせは、繁殖者資料で外見の変化が小さくなる例として記載されています。しかし、その見た目や個々の繁殖経験だけから、子の健康まで保証する対策とは扱いません。【C:外見とアレル関係の記述】The Ball Street Journal
繁殖での使い方

スパイダーの観察・構成・親選びを整理した説明図です。
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新たな作出より、既存個体の情報を確かめる
この図鑑では、Spiderを含むコンボの構成は説明しますが、Spiderを増やすための組み合わせは推奨しません。REPTAは内耳の異常とウォブルへの懸念から、会員によるSpiderの繁殖・販売・購入を認めない方針を示しています。これは専門団体の自主方針で、世界共通の法律を意味しません。【B】REPTA Deleterious Gene Policy
無症状に見える親を安全の根拠にしない
「親に揺れが見えない」「これまで餌をよく食べている」という観察だけで、子に問題が出ないとは保証できません。軽い表現の親を選べばウォブルを確実に除ける、という繁殖法として案内しないことが重要です。【A:重症度と選抜の問題】Rose・Williams、2014
販売個体を確認するときは、構成モルフ、親の由来、Clownなどの保有情報、過去の姿勢・移動・採餌の記録を分けて聞き取ります。「国内CB」「CB」という出生区分自体は、ウォブルのないことを証明するものではありません。
ClownやPastelの表現を目標にする場合は、Spiderを含まない個体を起点に計画できます。Spiderの模様を保ちながら健康リスクだけを確実に取り除ける、という前提では親選びを進めません。
健康・繁殖上の注意
ウォブルで見られる様子
ウォブルには、頭の揺れやねじれ、姿勢を戻しにくい状態、移動や餌への狙いの不正確さなどが含まれます。程度には個体差があり、販売写真や短い動画で目立たないことだけでは評価できません。【A:臨床所見】Schrenkほか、2022
原因を決めつけず個体を診てもらう
内耳研究はSpiderに関連する問題の理解を進めましたが、飼育中のすべての異常をSpiderのためだと決めつけるものではありません。新しい姿勢異常や採餌の問題が現れたときは、爬虫類を診療する獣医師に相談し、他の疾患や飼育環境も含めて評価してもらいます。
観察時は、いつから、どんな場面で起こるか、食べられているか、体重が維持できているかを記録します。症状を撮るために無理にひっくり返すなど、個体に負担をかける操作は避けます。
生活のしやすさを基準にする
飼育済みの個体では、安定して移動できるか、餌や水を利用できるか、転倒や外傷につながる場面がないかを確認し、状態に応じた環境調整を獣医師と検討します。一般的な飼育改善を、遺伝的な問題を治す方法として宣伝しないことも大切です。
同じSpiderでも一律の重症度や寿命を当てはめず、個体の機能と福祉を継続して見ます。
歴史・由来
1990年代末に広まった模様
World of Ball Pythonsは、Spiderの初作出者をKevin McCurley/New England Reptile Distributors(NERD)、年を1999年と記録しています。これは図鑑上の初作出記録として紹介し、野生個体の発見年まで同じ年だとは扱いません。【D】World of Ball Pythons
Bumblebeeなどの組み合わせを通じ、細い線状模様を作るモルフとして知られるようになりました。2016年の繁殖者資料にも、PastelとSpiderを重ねる例が掲載されています。【C】The Ball Street Journal
外見の記録から健康の検証へ
2014年には専門家調査によってウォブルの臨床像と福祉への懸念が整理され、2022年にはCT・MRIおよびμCTによる内耳の研究が公表されました。【A】2014年論文、2022年生体画像研究、2022年μCT研究
現在は魅力的な模様を記録するだけでなく、健康情報を購入者へどう伝え、新たな繁殖をどう判断するかも図鑑に必要な内容になっています。
顕性(優性)Dominant
1 コピー受け継ぐだけで見た目に出ます。スパイダーを持つ親からは、およそ半分の子に出ます。
参考資料
- ANeurological dysfunction in a ball python (Python regius) colour morph and implications for welfareMark P. Rose; David L. Williams ・ 2014
- AComparative Assessment of Computed Tomography and Magnetic Resonance Imaging of Spider Morph and Wild Type Ball Pythons (Python regius) for Evaluation of the Morphological Correlate of Wobble SyndromeFabian Schrenk; J. Matthias Starck; Thomas Flegel; Ingmar Kiefer; Wiebke Tebrün; Michael Pees ・ 2022
- AMalformations of the sacculus and the semicircular canals in spider morph pythonsJ. Matthias Starck; Fabian Schrenk; Sophia Schröder; Michael Pees ・ 2022
- BDeleterious Gene PolicyREPTA
- CUnderstanding Allelic Genes in Ball Pythons!Warwick Von Hagen; edited by Justin Kobylka ・ 2016
- COrdering Genetic TestsCltch / Rare Genetics Inc.
- DSpiderWorld of Ball Pythons / Pro Herper Labs
- Cスパイダー het クラウンAniLover
