パステル / Pastel
黄色〜黄褐色の地色と、頭部や背中の暗色が淡く抜ける表現が特徴。2コピーのスーパーでは淡色化がより強まります。
- 遺伝形式
- 不完全顕性(不完全優性)タップで解説
- Super / Homo
- あり スーパーパステル
- 別名/旧称
- Pastel
- 最終確認日
- 2026-09-24
このモルフについて
パステルとは
パステル(Pastel)は、黄色い地色、頭部や背中の黒褐色部分の淡色化を特徴とするボールパイソンのモルフです。単体では野生型の面影を残しながら明るくなり、別のモルフに加えると、その色彩や模様の見え方を変えます。
1コピーではパステル、2コピーではスーパーパステルになり、スーパーでは淡色化がより強く現れます。単体の違いとともに、相手の模様にどんな色を残したいかで使い方が変わります。【C:繁殖者の形態・遺伝説明】Northwest Reptiles・Super Pastel
「黄色を足す」だけではない楽しみ方
パステルを見るときは、黄色の強さだけでなく、頭部の抜け、暗色部分の残り方、地色との境界、成長後の色を比べます。同じパステル入りでも、クラウンではクラウンの模様、パイボールドでは白斑以外の有色部、デザートゴーストでは成長後の明るさが、それぞれ比較の軸になります。
ベビーの鮮やかさが成体まで続くとは限らず、親の成長後の表現も確認します。
資料の読み方
【A】査読論文、【B】大学・獣医等の専門資料、【C】作出者・繁殖者・検査機関などの一次資料、【D】図鑑・登録資料等の二次資料を示します。資料区分と主張の確かさは別です。繁殖例や写真だけでは、原因遺伝子までは証明できません。
特徴・見分け方

当店の販売掲載個体84:パステル クラウン(メス・CB)。パステル単体の標準像ではなく、クラウンとのコンボ例です。
詳しく見る
体色とブラッシング
黄色から黄褐色の地色と、黒褐色の模様との組合せを見ます。暗色のサドル部分が一様な黒ではなく、内側に淡い色が差したようになる「ブラッシング」も確認点です。Bailey & Bailey Reptilesは、自身のパステルを紹介する中で、明るい黄色と暗色の対比、サドルの色抜けを挙げています。【C:繁殖者の形態説明】Pastel Jungle
頭部・眼・腹部を合わせて見る
頭頂部の色が薄く抜ける個体、緑がかった淡い眼を持つ個体、腹部が明るく比較的すっきり見える個体が知られています。繁殖者が掲載した実例でも、眼や頭部、黄色の強さに違いがあります。【C:飼育・繁殖個体の観察】EdPetsのパステル個体比較
ただし、「緑の眼ならパステル」「頭が白ければスーパーパステル」と一つの特徴だけで確定しません。眼の色は照明や瞳孔の開き方でも読みづらく、コンボでは他モルフの影響も受けます。親の構成、同腹個体、成長記録と合わせて判断します。
成長に伴う褐色化(ブラウンアウト)
パステルには、幼体時の明るい黄色が成長とともに落ち着き、褐色味が増す個体がいます。繁殖者の記録にも、色の残り方を意識した系統・個体選びが見られます。ただし、系統名だけで「必ず褐色化しない」とは保証できません。【C:長期飼育に基づく説明】EdPetsの解説と保有個体
同じ個体の撮影日が分かる写真で、脱皮前後や照明条件を揃えて比べます。別個体のベビーと成体を並べても、成長変化の証拠にはなりません。
スーパーパステルの確認
スーパーパステルは、パステルの2コピー体です。頭部の大きな色抜けや、広がったブラッシングが知られます。【C:繁殖者の形態説明】Northwest Reptiles・Super Pastel
ただし、「最も明るい子」を選ぶだけでコピー数を確定するものではありません。単体同士だけでなく、他モルフを含む繁殖からも作出されます。KDF Reptilesの2023年Clutch #43には、両親がともにパステルを持つ交配からスーパーパステルが得られた記録があります。【C:交配と孵化の一次記録】KDF Reptiles・2023年繁殖記録
遺伝・アレル関係
1コピーはパステル、2コピーはスーパーパステル
パステルは不完全顕性として扱います。以下の「コピー」は、パステルに対応するアレルの数を指します。
・0コピー:パステルを持たない
・1コピー:パステル
・2コピー:スーパーパステル
古い資料では「co-dominant/共優性」とも表記されます。本ページは、1コピーと2コピーで外見が異なる不完全顕性として扱います。【C:繁殖者による遺伝形式の説明】Markus Jayne・Genetics 101
スーパー体を親に使う意味
パステル同士からは、パステル非保有、1コピーのパステル、2コピーのスーパーパステルが生まれます。スーパーパステルを親に使うと、通常の有性生殖ではすべての子にパステルを1コピー渡します。相手もパステルを持つ場合は、スーパー体も得られます。【C:繁殖者の交配モデル】Markus Jayne・Genetics 101
「het」の意味と名称の混同
パステル1コピーもヘテロ接合体ですが、通常は外見に作用します。「het Clown」のような潜性モルフの保因と混同しません。一方、コンボで判別しづらいことはあり、外見が不明瞭なだけで非保有とは決められません。
「Killer」はスーパーパステルを含む一部のコンボ名に使われる語です。たとえばKiller Beeはスーパーパステル+スパイダーであり、スーパーパステル単体の別名ではありません。また、Black PastelやCinnamonは、名前にPastelを含む古い呼称があっても、このページのパステルの暗い個体やスーパー体ではありません。販売名は構成要素まで確認します。【C:コンボ構成の登録】Markus Jayneのコレクション
原因遺伝子・アレル関係の確認状況
2026年10月8日までに今回確認した公開文献では、通常のPastelに対応する原因遺伝子名・原因変異を確定できる論文は確認できませんでした。2016年論文にPastelの写真や色素関連候補遺伝子が登場しても、それらをPastelの原因遺伝子と結び付けることはできません。【A:研究範囲の確認】Irizarry・Bryden(2016)
系統名だけで分子レベルの同一性や、別モルフとの同一遺伝子座関係は断定しません。DNA検査も、現在の対象項目と検出範囲を提供機関で確認します。
作用・表現型への影響
確認できるのは、体色と暗色部分の見え方の変化
パステルの作用は、黄色い地色が目立つことや、暗色部分が淡く抜けることとして観察されます。全身を均一に黄色へ変えるわけではなく、暗色模様を残しながらその濃淡や地色との対比が変わります。ブラッシングは「模様のふちが明るい」という一か所の説明だけでは捉えきれません。【C:繁殖者の形態説明】Bailey & Bailey Reptiles
「黄色の色素が増える」とは断定しない
黄色が目立っても、黄色素胞の数、暗色の影響、色素の分布など、どの仕組みがどれだけ関わるかは写真だけで決められません。パステルの原因変異や色素胞への具体的な作用は、今回確認した資料では確定できていません。見た目の淡色化と分子機序を分けて説明します。【A:研究対象の確認】Irizarry・Bryden(2016)
成長後の色も含めて作用を評価する
黄色を際立たせたい、頭部を淡くしたい、暗色模様との対比を残したいという目的で、評価する場所が変わります。スーパー化による淡色化も、濃い模様を楽しむ計画には合わない場合があります。同じ構成でも個体差が残るため、成体の色を基準に選びます。
他遺伝子との相互作用・コンボ

パステル GHI TSKアザンティック/ユーザー提供個体写真。3形質のコンボ例です。
詳しく見る
クラウン:クラウンの模様にパステルを重ねる
パステルクラウンは、パステルと視覚発現したクラウンを組み合わせたコンボです。パステルの黄色や淡色化を、クラウンの頭部・背中・体側の模様の中で比べます。スーパーパステルクラウンまで進める場合は、単に明るさを増やすのではなく、どの程度の暗色模様を残したいかも判断点です。
クラウンとPastelは別に確認します。「Pastel het Clown」は、クラウンを視覚発現した「Pastel Clown」と同じ構成ではありません。【C:作出例と構成】Markus JayneのClown Pastelを含むコレクション
アニラバの掲載例:パステル クラウン
アニラバの販売掲載個体84は、「パステル クラウン」のメス・CBとして紹介されています。掲載写真では、黄土色から淡褐色の地色、背中の濃褐色の帯、体側の淡色部に残る褐色斑を確認できます。
一個体のコンボ例であり、パステル単体の標準像や成長変化を示す写真ではありません。【C:当店の個体表示・写真】掲載個体84
パイボールド:白斑と有色部を分けて見る
パステルパイボールドは、白斑と色の残る部分の両方を持つコンボです。パステルの色彩効果を見るときは、有色部の黄色・褐色や模様に注目します。白い面積だけから、パステルの有無やコピー数を判定しません。
2023年のパイボールド研究にも、パステルパイボールドの実例写真が掲載されています。ただし、この研究で関連が調べられたtfecはパイボールド側の遺伝子であり、パステルの原因遺伝子がtfecだという意味ではありません。【A:図1Dと研究対象】Garcia-Elfringら(2023)
デザートゴースト:成長後の明るさを目標にする
パステルデザートゴースト、スーパーパステルデザートゴーストは、繁殖者のコレクションで確認できる組合せです。DGは繁殖者から、成長後も明るさを楽しめる方向のモルフとして報告されています。ただし、DGが入れば全個体の褐色化がなくなるという保証にはしません。【C:繁殖者の形態説明・保有例】Ghost ConstrictorsのDG解説、Markus Jayneのコレクション
目標が成体の色なら、ベビー写真に加えて親や同構成の成体写真を見ます。DGと通常のGhost/Hypo、Desertは名前を省略して混同せず、繁殖用ではDGの系統・保因根拠・検査内容まで確認します。
模様の方向性を変える組合せ
レモンブラストはパステル+ピンストライプ、ファイアフライはパステル+ファイアです。前者はピンストライプの線状模様との組合せ、後者は明るさや抜け方の比較が入口になります。どちらも、単体写真とコンボ写真を同じ条件で比べると、狙う表現を決めやすくなります。【C:コンボ構成】Bailey & Bailey Reptiles、Markus Jayneのコレクション
バンブルビー(パステル+スパイダー)、キラービー(スーパーパステル+スパイダー)は歴史的に知られる名称ですが、スパイダーに関連する健康上の問題を切り離して繁殖先として勧めることはできません。健康・繁殖上の注意も併せて確認してください。
繁殖での使い方

成体の色を基準に、クラウン・パイボールド・デザートゴーストとの構成と親選びを整理した図です。
詳しく見る
まず決めるのは「どの成体を作りたいか」
パステルの種親候補は、黄色の強いベビーだけで選ばず、次の点を確認します。
・親と同腹個体の成長後の色、頭部の抜け、暗色模様の残り方
・写真の撮影時期、脱皮前後、照明条件
・PastelかSuper Pastelかを裏付ける親情報と繁殖記録
・組み合わせる潜性モルフの視覚発現、確定het、poss hetの区別
・健康状態、摂餌・成長記録、近交の程度、産卵歴と回復状態
系統名だけで色の持続を決めず、親の成体表現を確認します。
クラウンを軸にする親選び
クラウンでは、頭部の抜けに加え、背中の濃い帯や体側の模様をどの程度残したいかを決めます。まずPastel ClownとSuper Pastel Clownの成体を比較し、目標に近い親を選びます。
Pastel ClownにPastelを持たないClownを組めば、同腹でパステル入りと非保有を比較できる可能性があります。Super Pastel Clownは、すべての子にパステルを渡す構成にしたい場合の選択肢です。ただし、スーパーを親にすれば目標どおりの色になるという意味ではありません。相手の模様と成体の色も合わせて選びます。【C:パステルの遺伝モデルに基づく設計】Markus Jayne・Genetics 101
パイボールドを軸にする親選び
黄色い有色部と白斑の対比を目標にするなら、Pastel Piedの有色部と、親の成体写真を確認します。白斑の比率だけで種親を選ぶと、比較したかった有色部の質を見落とすことがあります。
Pastelを持たないPiedと組むのか、Pastelを持つPiedと組んでSuper Pastel Piedも狙うのかを決めます。Piedを片親だけに入れても、相手がPiedを保因しないことが確定していれば、その世代で視覚発現したPiedは得られません。Pastelのコピー数とPiedの保因状況を別々に記録します。【A:Piedの潜性遺伝を支持する交配データ】Garcia-Elfringら(2023)
デザートゴーストを軸にする親選び
褐色化を抑えた成体の色を目標にするなら、Pastel DGまたはSuper Pastel DGの成体を先に見て、黄色・クリーム色・暗色の残り方を選びます。DGという名称だけでは、その計画に必要な保因情報や系統の確認は終わりません。親の由来と検査報告を揃え、相手と組み合わせたときにDG表現を得られる根拠を確認します。
KDF Reptilesの2023年Clutch #43は、Pastel DG × Pastel Leopard VPI Axanthicから、Super Pastelを含む子を「DG・VPI Axanthicのダブルhet」と記録しています。片親で見えていた潜性モルフの表現が、子では保因状態になる一方、Pastelのスーパー体は作れる実例です。「DG親を使った子」と「DGが視覚発現した子」を混同しないことが、次の親選びにつながります。【C:実際の繁殖記録】KDF Reptiles・2023年
結果を残してから次の組合せへ
親ID、構成の根拠、成長写真を残し、次世代の色と模様を比較します。販売掲載個体84の「アダルト即戦力!」という説明だけでは、年齢や産卵歴、現在の体調まで確認できません。繁殖用の親として選ぶ際は、それらの個体記録も確認します。
健康・繁殖上の注意
パステル単体と、併合モルフの問題を分ける
今回確認した公開資料の範囲では、パステルまたはスーパーパステル単体に特有の疾患を、原因変異と結び付けて確定した査読研究は確認できませんでした。これは、あらゆる個体やコンボに健康上の問題が起きないという保証ではありません。色の明るさやコピー数だけで、健康状態・繁殖適性は判断しません。
Black Pastelのスーパー体など、似た名前の別モルフについての情報を、そのままSuper Pastelに当てはめないことも重要です。
スパイダー入りコンボでは別途注意が必要
スパイダーでは、頭部の揺れやねじれ、平衡感覚・捕食動作の異常を含むwobbleと内耳の形態異常との関連が、2022年の研究で報告されています。小規模な研究であり、すべての個体の症状の程度や、すべてのコンボの発症率を示したものではありません。【A:解剖・画像研究】Starckら(2022)、Schrenkら(2022)
バンブルビーやキラービーにパステルが入っていても、この懸念が解消されるとする根拠はありません。名称の有名さや色の美しさだけを理由に、こうした組合せの繁殖を勧めることはできません。
ブラウンアウトは色の変化を指す言葉です。体重減少や運動の異常までモルフ本来の特徴として片付けず、繁殖前は継続した飼育記録と個体の状態を確認します。
歴史・由来
初期の繁殖記録
パステルは、古くはPastel Jungleという名称で紹介されてきました。Graziani Reptilesの公式年表は、1997年の基本モルフとして「Pastel Jungle — Graziani Reptiles」を記録しています。同じ年表では、1999年の派生表現として「Super Pastel Jungle — NERD」を掲載しています。【C:当事者の公式年表】Graziani Reptiles・Mutations
本ページでは、この記録に基づき、通常形の初期繁殖をGreg Graziani/Graziani Reptiles、スーパー体の初期作出をKevin McCurley/New England Reptile Distributors(NERD)として分けて紹介します。「発見」「初繁殖」「不完全顕性の確認」を、すべて一つの年・一人の出来事としてまとめません。
名前からコンボへ
同年表には、パステルがその後、クラウン、パイボールド、ピンストライプなどへ組み合わされていった記録もあります。別の模様に明るさを加える素材として使われてきました。【C:繁殖史の一次年表】Graziani Reptiles・Mutations
系統名や古い呼称を読む際も、現在の構成表記と由来を照合して、個体の記録につなげます。
不完全顕性(不完全優性)Incomplete Dominant
1 コピーでも見た目に出て、2 コピー揃うと「スーパー体」と呼ばれる別の見た目になります。業界で長く「共優性(Co-Dom)」と呼ばれてきた型です。
参考資料
- AIn Silico Analysis of Gene Expression Network Components Underlying Pigmentation Phenotypes in the Python Identified Evolutionarily Conserved Clusters of Transcription Factor Binding SitesKristopher J. L. Irizarry; Randall L. Bryden ・ 2016
- CSuper PastelTom / Northwest Reptiles ・ 2021
- CPastel JungleBailey & Bailey Reptiles
- CWhich Pastel Ball Python would you like?EdPets Shop ・ 2010
- CGenetics 101Markus Jayne Ball Pythons
- CBall Pythons — CollectionMarkus Jayne Ball Pythons
- C2023 Ball Python Clutch Records — Clutch #43KDF Reptiles ・ 2023
- APiebaldism and chromatophore development in reptiles are linked to the tfec geneAlan Garcia-Elfring et al. ・ 2023
- CDesert Ghost Ball Python: Genetics, Combos & PricesGhost Constrictors
- Cパステル クラウン(掲載個体84)アニラバ/AniLover
- AMalformations of the sacculus and the semicircular canals in spider morph pythonsJ. Matthias Starck; Fabian Schrenk; Sophia Schröder; Michael Pees ・ 2022
- AComparative Assessment of Computed Tomography and Magnetic Resonance Imaging of Spider Morph and Wild Type Ball Pythons (Python regius) for Evaluation of the Morphological Correlate of Wobble SyndromeFabian Schrenk; J. Matthias Starck; Thomas Flegel; Ingmar Kiefer; Wiebke Tebrün; Michael Pees ・ 2022
- CMutations — Base Mutations / Designer MutationsGraziani Reptiles
